当店の常連さんだったお客様のご家族の方からお電話頂き、本を見に来て欲しいとの連絡がありお伺いさせて頂きました。
実はご本人からではなかったのでどうされたのだろうと思っていたら、最近お亡くなりになられたとの事でした。
そう言えば当店に急に来られなくなってどうなされたのかなと思っていたのです。
以前その方は店に来られると、いつも小一時間ほど、本の話や世間話などをされていかれました。
その時は特に持病も無く健康そうでお元気でもありそんな感じではなかったような気がしてたんですが。
ご家族の方の言われるには、1年くらい前から「生前整理だ、終活だ」と言われて、身の回りのものを整理されていたのだそうです。
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今日は買取の話は無しにします。
お部屋に案内されると三方の壁側に大きな書棚がズラリ。
本を端のほうから拝見させて頂くと一つの書棚の下のほうに古そうな薄いアルバムが1冊ありました。
ご主人、奥様の若かった頃、子供さんたちの小さかった頃の写真だそうです。
整理途中でもありご本人はそこまでまだ手がまわっていなかったのでしょうか。
ご家族の方は何故こんな所にこんなものがと不思議がっていましたが、そのアルバムを皆さんで懐かしそうに暫く見入っていました。
そぅなんですよね、皆さんでその一時を持てるっていう事は何だかとてもいいです。
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最近、「生前整理」「終活」という言葉をテレビ・新聞・雑誌・本、などで見聞きします。
これらは何だか不安を掻き立てるような文言のような気がしてならないのです。
私としては、それらを余程のことが無い限り無理までしてやらなくてもいいと思うんです。
憶測になってしまいますが、その方もそれらをするうちに大袈裟かもしれませんが過去の自分自身が次々と消えていくような気分になっていったんじゃないかと思うんです。
ご家族の方は「ほどほどに」とその方によく言っていたらしいのですが、「後に家族の皆に迷惑かけたくないから」と暇を見つけては整理廃棄処分を続けられていたらしいです。
亡くなられた原因はその事ではないようですが、でもその過程で元気が少しずつ無くなってきていたのは事実なんだそうです。
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死後の相続トラブルと言うのをよく見聞きします。
もし生前整理とか終活とかをされるのなら、差し迫ってない限り、今までの人生を振り返りながら余裕を持って気長に、そして楽しみながらしたら良いのではないかと思います。
今まで頑張って来たんだし、そしてそれらはすべて生きてきた証なんですから。
と、私は思うんです。
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そう言えば私の親父、自分の小さな葬式が出来るだけの金額だけを残して数年前あの世へ旅立ちました。
遺言・遺言書もなく、負債もなく、遺品として残されたのは、眼鏡と普通の古ぼけた腕時計だけでした。
生前整理とかをしていたのを見聞きした覚えが全くないんです。
結局はプラスマイナスゼロで上手に人生を終えたんだなと思います。
「人間、生まれて来た時も裸、死ぬ時も裸で帰っていく」とよく言われます、息子の私としてはそのプラスマイナスゼロを見習いたいと思う。
思えば、私の本厄の時、それとなく親父に厄年の時どうしたのかと聞いたら、「そんなもん何もしとらん、人間、死ぬ時は死ぬ」と言っていたので、私も何もしなかった。
何もしなかった親父は98歳までこの世にいました。
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最後に、「生前整理・終活」なんだか寂しい言葉で嫌いですが、いづれは死が来るのでしょうから私もこれからやりすぎずボチボチと思っています。
あぁー、貴金属・ブランド品なんてものは何もないワタクシ、残っているのは本だけかー。
遺品が本?
いいじゃーありませんか、古本屋だもの。